山陽日日新聞ロゴ 2003年5月30日(金)
創刊3号の月刊誌で
 古き良き日本再発見「小津安二郎の散歩道」
  鎌倉、銀座、松阪と尾道
   小津生誕百年記念で33ページの特集
表紙千光寺新道の写真と内容
 日本人の価値観が多様化する中で、今年五月に創刊された
月刊「天上大風」の創刊第三号七月号で、33ページを費や
して古き良き日本再発見「小津安二郎の散歩道」を特集して
いる。小津の愛した食べ処、散歩コースとして鎌倉、東京、
松阪・伊勢と「尾道・鞘の浦」が紹介されている。
 最初に小津作品の7枚のスチール写真を紹介し、うち4枚
が代表作の「東京物語」。
 小津作品には、古き良き日本の風景が描かれている。当時
の風景が残る散歩道を辿り、小津が描いた「清澄にして美し
き世界」を描くことができるだろうという特集の意図、狙い
を述べている。
 「北鎌倉」編は「日常が・そのまま普遍へ 小津安二郎の
鎌倉の山」で、芥川賞作家の保坂和志が寄稿。小津が愛した
店を6ページにわたって紹介。
 「鎌倉」編は、俳優の竹中直人が「小津さんの映画って変
だよね」をインタビュー形式で。鎌倉の散歩コースと小津が
通った名店。
 続いて「長谷周辺」の散歩コースと名店などを6ページで
紹介。
 モダンな小津がこよなく愛した街「銀座」では、『林芙美
子の昭和』(新書館)の著者である作家の川本三郎が「小津
映画にはなぜ銀座がよく出てくるのか?」を寄稿している。
 これに「丸ビル」と「はとバスツアー」が続き東京が全部
で8ページ。
 小津の古里「松阪・伊勢」では、昨年オープンした小津安
二郎青春館や松阪商人の館、お伊勢参りの旅籠、古い町並み
などを4ページを使って紹介している。
 最後が「尾道・鞘の浦」編で、「尾道を、駅馬車に乗って。
−−−小津さんの映画的冒険と《東京物語》の世界」。映画
作家の大林宣彦が寄稿。
 「東京物語」の風景を歩くで、坂の町尾道を代表する渡場
上の石畳の道をはじめ、14枚の写真を使って「大林ワール
ド」の尾道を紹介している。
 木造三階建ての数寄屋造りの「魚信」。「桂馬」の蒲鉾。
オコゼの料理の「青柳」。「からさわ」のたまごアイス。
「アンティーク茶房芙美子」の5店舗が写真入りで登場して
いる。
 大林監督は「ここには古い町に深く刻まれた暮らしの智慧
の記憶がある」と、尾道を誇る時の持論を熱っぽく述べてい
る。
 その中で、日本や映画を「豆腐と雁擬き」に譬え、頑固に
豆腐屋であり続けたのが小津さん。雁擬きの大量生産時代の
町壊しの中で、小津の残した豆腐の味を守ろうとしてきたの
が、自分の「町守り」映画であったと、小津作品と尾道と自
分を明確に位置づけており、散歩コースというロケ地案内・
情報の旅ではなく「人と邂逅する旅をして欲しい」と、特集
に媚びない持論をどこまでも展開していて興味深い。
 小津の散歩道のラストが「鞘の浦」で、尾道に冠される
「いまも残る日本の原風景」の尊称が鞆の浦に与えられてい
る。
 路地の角を曲がるたびに、懐かしい風景に出会える港町と
して「鴎風亭」や、5月末で閉店する理髪店を改造したハヤ
シライス店などが紹介されている。尾道・鞆の浦編が全部で
6ページ。
 小津生誕百年の今年、小津ワールドが観光の1つのキーワ
ードになってくるかどうか、いずれにしれも「人も映画も
『静謐』」が小津とその作品の最大の特徴であることは、今
も変わりない。


転載責任者メモ:ハヤシライスの友光軒は美味しかったですし
        残念ですが建物は別の店として残るそうです。
        


ニュース・メニューへ戻る