山陽日日新聞ロゴ 2003年5月13日(火)
宮辺海産「ぬり源」
数少ない『尾道の宝物』を上手に残して...
 瀬戸内海鮮の中国料理店に改装
  新設の「まちなみ形式事業」補助申請
宮邊海産外観
 本通りの銭湯大和湯、千光寺山手の旧福井邸、西御所海岸
通りのレンガ造りの倉庫、市役所前の倉庫群の一つに続いて、
土堂海岸通りの海産物問屋「ぬり源」宮辺海産(株)の建物が、
出来るだけ原形を保存して中国料理店に生まれ変わる。世界
遺産登録関連で「まちなみ形成事業補助金」を今年度、尾道
市が創設したがその第一号の適応をうけることになる。
 宮辺海産の建物の改修工事は、五月連休明けから始まった
(写真は七日撮影)。今週末から本格的な改装工事に入り、
6月5日までに内装工事等を済ませ、6月12日(金)に中国
料理店「美琳食府(メイリンショクフ)」がオープンする予
定。
 新店舗のオーナーは天満町、寿美谷修さん(52)。
 大連や上海でしか食べられない中国料理を、瀬戸内海の素
材を使って、尾道らしいレトロな空間で提供する。中国人の
コック3人と通訳兼マネージャーらスタッフの平均年齢が27
歳。調味料等も厳選し、日本人の口に合うよう料理も工夫す
る。ランチ(780円)は飲茶(点心)方式で、主に女性の
コックが腕をふるう。
 オーナーサイドとしては、尾道水道は上海そっくりであり、
上海には昭和初期のものを沢山残した町づくりをしており、
そのコンセプトと宮辺海産の建物が合致したという。
 従って、ガラスやセメントなど日本の昭和初期のものをわ
ざわざ中国から運び込み、その到着を待って改装工事に着手
する。外壁のセメント壁を昭和初期のように張り替える。ガ
ラスについては間に合わないため、夏頃までには張り替える
という。
 下記掲載の通り、同建物には「産業遺構」としての貴重品
が数々あり、これらは可能な限り現状のまま保存し、止むを
得ず取り壊したものについても、3階等へ保管すると話して
いる。
 尾道市は今年度、世界遺産登録へ向けて「まちなみ形成事
業補助金制度」を新設。三山に囲まれた中心市街地を範囲に、
歴史や風格、個性ある住宅や蔵などの建造物、看板や垣など
の構造物を対象に、これらを改修する場合は工事費の4分の
3、200万円を上限に補助金を出す。初年度として3件
600万円を予算化しているが、この制度を活用した第一号
の申請になる。
 昭和元年建築、当時は珍しい洋館3階建ての建物。一階に
ある荷物用のエレベーターは当時のままのもので、現存する
物では日本最古といわれている。今も現役であり、その他木
製ガラス張りの電話ボックス、カウンター、伝票仕分け棚、
建物正面の,三角柱ガラス張り看板などは超貴重品とされて
いる。
 平成10年に県教委が報告書にまとめた「広島県の近代化遺
産」の中の「宮辺海産」編をそのまま下記に紹介している。
 尾道市が今春作成した「レトロショップinおのみち」でも、
4つの『別格』の1つとして大きく掲載されている。

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広島県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書
広島県の近代化遺産
宮邊商店
【所在地】尾道市十四日元町
【所有者】宮邊商店
【竣工年】昭和初年
【設計/施工】不詳
【構造・材質】鉄筋コンクリート造
 尾道の旧市街地の中心部に位置する住吉浜は,元禄時代の築造以来,
長らく港町尾道の玄関口であり,各種の問屋が数多く立ち並び殷賑を
極めていた。住吉社の両側の雁木に並ぶ船や荷物と,その後ろに立ち
並ぶ浜倉が織りなす景観は,様々な絵画に描かれている。
 以前の生業に由来する塗源の屋号を持つ宮邊商店も住吉浜に立地す
る海産物問屋の一店である。
 建物は,鉄筋コンクリート3階建てである。設計図等は発見できな
かったが,今治の業者の設計によるもので,昭和初年に竣工したもの
という。
 各階とも一室で,正面左側に階段,中央には荷物を運搬するための
リフトが設置されている。一階が事務所と荷物の発送作業場,2階,
3階は倉庫として使用されている。各階の躯体はラーメン構造で,内
部には整然と柱梁が並ぶが,なぜか正面側には柱型が設けられていな
い不思議な構造となっている。
 一階入り口右側の,事務コーナーのカウンターの後ろの状差には,
日本各地とともに,朝鮮,樺太等の地名も描かれており,時勢が偲ば
れる。また,当時は希であった専用遠距離電話が納めてあった木製ガ
ラス張の電話ボックスも残されている。リフトは1.2m角の電動式で,
鉄骨製の骨組みに納められ,現在も当初のまま使用されている。 2,
3階倉庫部分の開口部の窓枠は,鉄製で防火シャッターも装備してい
る。
 外観は石造のベースメントの上に,黄褐色の人造石塗で仕上げられ
ている。意匠は,近世様式をベースとしながら細部を幾何学化,単純
化し,また窓の上には大きな水平の庇がかけられる等,全体的に当時
流行していたアールデコ様式の特色をよく示すものである。なかでも,
ファサードの3階中央部に据え付けられた三角柱型ガラス張りの看板
は印象的である。これは,中に仕込まれた電気照明で「塗源宮邊商店」
の名を明々と浮き出すものであった。
 建物内外に昭和初年の最新鋭機器を整備した宮邊商店は,港町尾道
の先取の気風を雄弁に語っている。
                           (西川)
電話ボックスとリフトの写真
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