山陽日日新聞ロゴ 2003年1月11日(土)
美術館オープン
市長ひと言だけ。「観て感じてほしい」と
 
安藤さん「美しく出来たと自負」
  「市全体を楽しい人生送れる場に」
美術館前の広場とガラス張りの美術館テープカットの様子 庫田益雄・元市議会議長
 「本日ここに列席賜りました世界的建築家安藤忠雄様の大き
なお力をいただき、尾道市立美術館が新しく生まれ変わりまし
た。凛とした美しさをたたえる建物から、多くのメッセージが
私たちに語りかけられています。尾道市民が誇りにできる宝物
が、ここに生まれ変わるという形で誕生しました。1年8か月
の工期中、お力をいただいた全ての方々に感謝をささげながら
テープカットを行います」という司会の中司弘子教育委員の言
葉で、10日午前10時から尾道市立美術館のリニューアルオ
ープン記念式典が行われた。
 設計の安藤忠雄東大教授を真ん中に、亀田良一尾道市長と松
谷成人市議会議長の3人がテープカットを行い、引き続いて瀬
戸内海が一望できる旧館を改装した2階ホールで式典を行った。
 亀田市長は紆余曲折の果ての開館に、ことのほか感慨深げな
面持ちで挨拶に立ったが「何か言おうか?、と思っていたがそ
の必要はないのでは...。 皆さんが美術館を観て、感じて下さ
い。下手な話をする必要がない。どうか美術館にご愛顧を...」
とその感無量の喜びを表現した。
 安藤さんは黒づくめのノーネクタイ姿で「建築家というのは
自己中心的でノーテンキ。数年前に美術館に来て、設計してほ
しいと言われたが、敷地がどこにもない。解体するのかと思っ
たら、日本瓦の大屋根を残して増築してほしいとのこと。大丈
夫かナァーと思った。
 市長は建物は100年はもつ。老人を大切にするように、古
いものも大切にしなければいけないという。そういう古いもの
を大切にした姿を子ども達に見せ、そこからしっかり学んでほ
しいと。
 手掛けてからも悪戦苦闘の連続で、改めてお断りしようかと
思った時期もあったが、市長の挑戦するという熱意にほだされ
た。
 古いものと新しいものがドッキングしたが、違和感がない。
人間が美しく年をとるように、建物も美しくリニューアルでき
たと自負している。
 古いものと新しいものを継いだお陰で、建物の所々に"隠れ家"
のような場所が出来た。作品を観ながらこの自分なりの部屋で、
そっと自分だけの場所を持つことが出来、作品を考える場所に
もなる。
 展覧会を観に来て、お年寄りも若い人も年齢を越えて美術品
を観ながら対話が出来る場所にもなる。
 瀬戸内海の美しい古里の風景を心に刻み込みながら、芸術を
通してものを考える力を育てる場所にしてほしい。
 行政が一方的に与えるという美術館ではなく、市民を行政が
共に努力しながら育てていく開かれた美術館がスタートする。
 映画東京物語の地尾道に美術館が出来たことで、市全体が楽
しい人生が送れる場所になったらいい」と完成後の美術館を尾
道市民に託した。
(写真右下は、美術館に累計で600万円の寄付をした庫田益
雄・元市議会議長。同じく福島嘉子さんも喜びの出席をした)

魁夷夫人 東山すみさんが寄付
 唐招提寺襖絵「濤聲」のリト
 続いて、中司さんから次の通り特別企画展「印象派のふるさ
とノルマンディーの風景」展を紹介した。
 「本展は、ノルマンディーの代表的美術館とフランス有数の
美術館からの日本初公開作品を含む、国内外から集められた名
画およそ100点で構成されています。ミレー、コロー、クー
ルベ、モネなど近代絵画の巨匠の作品とともに、フランスに留
学してこの地の風景を描いた黒田清輝や久米桂一郎など草創期
の日本の洋画の担い手となった画家たちの力作もあわせて紹介
している。
 本展は、尾道市立美術館が独自に企画し、下関市立美術館、
浜松市美術館の巡回展を終えて尾道でファイナルを飾る展覧会
です」。
 主催者、協賛者を紹介後、リニューアルオープンを記念して、
故東山魁夷画伯のすみ夫人より唐招提寺の襖絵「濤聲」リトグ
ラフと、吉井長三吉井画廊社長からも絵画の寄贈があったこと
を報告した。
 ノルマンディーのカーン美術館のアラン・タピエ館長の発声
(通訳付き)で乾杯した。
 11日(土)〜2月16日(日)まで。午前9時〜午後5時、
13日(月)は開館、14日(火)代休。月曜休館。大人1000円。
高・大生800円、小・中生500円。


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