山陽日日新聞ロゴ 2002年2月22日(金)
夕張国際映画祭
 大林監督世界の映画人と
  「消えた炭鉱と映画愛した人に感謝を」
壇上の大林監督、ヤン・ハーランさんら
(続報)第13回「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」が真
冬の北海道夕張市で14日から5日間繰り広げられ、国内外から多
くの映画人が集うなか、70本もの映画が上映された。尾道出身の
大林宣彦監督はメインゲストで参加し、新作映画『なごり雪』が招
待上映された。ミュージシャンの伊勢正三さん、臼杵市長の後藤國
利さんらも参加し、「故郷と映画」のテーマでフィルムコミッショ
ン・シンポジウムが開かれ、これからの映画の町について話し合わ
れた。
 市民1000人が出席してのオープニングセレモニーでは、スタンリ
ー・キューブリック監督を長年支え、スピルバーグ監督作品『A.I』
の製作総指揮を務めた米国のヤン・ハーランさん、98年に話題作
『八月のクリスマス』を作り上げた勧告の映画監督ホ・ジノさんら
国際色豊かな映画人とともに大林監督が登壇。映画祭チーフプロデ
ューサーの小松澤陽一さんが「こういう時代に文化的な映画祭は特
に、日本ではやり難いが、夕張だけは人間と人間の信頼があり、市
民ボランティアの参加で活発になっている」とあいさつ。
 「こういう時代だからこそ、『なごり雪』はとても大事な映画」
(小松澤さん)と紹介された大林監督は6回目のゲスト参加。監督
は「今年は日本の長く大きな炭鉱の歴史が閉じた年。かつて夕張も
炭鉱の町で、24時間の3交替、暗闇の中で働いた人達が唯一安らぎ
を求めたのが映画だった。だからこの町では映画が24時間上映され
ていた。その人達の暮らしの炎を暖かく包んだ雪の中で、今私達は
映画の炎を燃やそうとしている。それが出来るのは、炭鉱を愛し、
炭鉱で働くことに誇りを持ち、映画を愛し育てた方達のお陰がある
から。日本の、全世界の炭鉱で働いてきた方にありがとうと心から
言いたい」と先達への感謝の言葉を述べた。
 さらに「年が経てば消えざるを得ない物も世の中には多くある。
そんな時私達はいつも哀惜の念をおこす。しかし、すぐにでも無く
なって欲しい諍いや戦争は無くならない、21世紀は映画の世紀で
あると同時に、平和の世紀でなくてはいけない。夕張から、21世紀
の小さいけれども確かな平和な1歩が踏み出せる作品を世に送り出
し、多くの皆さんに映画の誇りと力、美しさを伝えるお手伝いをし
たい」と語り、大きな拍手を受けた。
 中田鉄治夕張市長は「思えば第1回は大冒険だった。どうして映
画祭なのかと言われ、1回で終わるとも言われた。映画祭を始めら
れたのは、人口が12万人いて、市民の最大の娯楽が『活動写真』
だったから。背中に赤ん坊を背負い、3人4人の子どもと手を結ん
でお母さんが映画へ行っていた」と語り、「映画祭で不況を吹っ飛
ばそう」と開会宣言。国内外からの監督やプロデューサー、俳優ら
が上映とトークを繰り広げた。



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