1998年8月30日(日) 県近代化遺産 尾道市編..(6) 西土堂町、石井耳鼻咽喉科医院 外観はルネサンス様式を |
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石井医院は、尾道駅の北側、旧市街を囲む山々のうち、西端に位 置する千光寺山の山裾に立地する。大正12年に耳鼻眼科の病院とし て、新築、開業された。 山裾の斜面に建築したため、外観は地上4階建てであるが、1階 の後ろ半分は地下室となっている。また平面はT字型をなしている が、東西の翼は斜面に従い、より高い地盤の上に乗せられている。 1階西側の玄関を入ると、表から裏へと通ずる斜路が、通り庭式 で1段高い裏庭へと通じ、さらに高いところにあった院長の住居棟 と連絡していた。 1階は主として外来患者の診察を、2階は事務所等病院全体の管 理機能を受け持っている。 3,4階以上は、手術室の他、入院患者用の施設に充てられ、裏 側の出入口に接続する階段から各翼に中廊下を延ばし病室を整然と 並べている。なお、現在かつての住居棟は他に譲られたため、病院 棟の3,4階部分は主に住宅として使用されている。 外観は、ルネサンス様式を近代化したもので各所に設けられた装 飾は単純化、幾何学化している。また、一部原形とは異なるものの、 美しく改修され、大事に維持されていることは、まことに印象的で ある。 設計者は関西の業者としか伝えられていないが、傾斜した敷地に 機能を盛り込むため、町屋を思わせる通り庭や中廊下式平面等、和 洋の手法の長所を採り入れ、これを巧みにまとめた手腕は見事であ る。 施行は尾道の業者(大宝組)で現在も盛業中あるが、そこに竣工 時の写真も保管されていた。往事の建設現場の風俗もうかがえ興味 深い。 なお現在金属製のポーチで覆われているが、かつて正面玄関の上 には、モルタルで石井サナトリウムと記されていた。また、山側出 入口の上には一部剥落しながらも、漢文の表記が残されている。初 代院長は、まず、漢方を、さらに西洋医学を学び、苦学の末医師と しての資格を獲得したという。これは東西の医学に通じ最新鋭の医 療を志そうとする気概を顕したものであろう(全文掲載)。 |