山陽日日新聞ロゴ 2000年12月2日(土)
ミステリー作家
明るくけなげな「尾道少年物語」

  終戦前後の暮らしぶり
   尾道出身、熊谷さんが自伝的小説
尾道少年物語
 7年前、骨太の物語性で旧ソ連の庶民生活やKGBを描いた「最後の
逃亡者」でサントリーミステリー大賞を受賞した尾道出身の熊谷独(ひ
とり)さんが終戦当時昭和20年の尾道での子ども時代の体験を綴った
自伝的小説「尾道少年物語」(文藝春秋社)を発行、話題を呼び、市内
の啓文社など書店では月を追うごとに売れ行きが伸びている。
 物語は尾道の吉和を舞台に当時の国民学校4年生の信一が主人公で終
戦の昭和20年8月15日の相前後する数か月の生活を50年以上経ち、
開かれた同窓会と絡ませながら描いている。
 半農半漁の吉和の子どもや大人の暮らしぶりを淡々と描写。金銀の拠
出命令、敵機襲来に備えた防空壕掘り、トンボを餌に使ったポカン釣り、
船で生活する家船、終戦時の玉音放送など説教じみた注釈をくわえず、
読む人にストレートに入り、その分、感動を呼んでいる。
 "熊谷君をバックアップしよう"代表幹事で吉和中第5回卒業生は「干
潟にて、玉音放送などどれをとっても懐かしい話ばかり。55年前の事件、
交友関係をよくぞ覚えていて感心させられます。尾道の西端、片田舎の
吉和の風物を叙情詩的に表現しており、現代では求め得られない珠玉を
ちりばめた文章はさすがです。皆さん読後の感想を文藝春秋社か熊谷君
に送ってください」と呼び掛けていた。
 熊谷さんは東京外語ロシア語科卒、22年間のサラリーマン生活ののち、
93年に書いた「最後の逃亡者」がサントリーミステリー大賞を受賞、
直木賞候補にもあげられた。著書は「秘境からの脅迫者」、「エルミタ
ージュの鼠」など5冊。

        

転載責任者メモ:吉和漁港は尾道駅から言えば西の方。観光コースからもはずれているため
        尾道を商港とばかり評価されがちですが、吉和は昔からの立派な漁港。ここの
        漁師は確かな繰船技術と勇ましさで、足利尊氏軍の水軍としても活躍。普段は
        漁師、戦となれば出陣。吉和太鼓祭りが浄土寺に奉納されますが、これも
        その時代から伝わるものとか。尾道の歴史は調べるほど深くなります。

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