山陽日日新聞ロゴ 2000年9月2日(土)
呼子丸引揚げ
 無惨な姿「見たくない」
  "宙吊り"まで3時間40分のドラマ
呼子丸引き揚げ 「これ以上、老醜を晒してほしくな
い」という大林映画ファンの声が現
実味を帯びた「呼子丸」の引揚げ作
業だった。
 向島町兼吉の尾道渡船(旧公営渡
船)桟橋に水没、係留中の「呼子丸」
の引揚げ作業は予定通り、尾道渡船
の最終便終了後の31日午後10時半
から青木組の手で始まった。
 大型のクレーン作業船を同桟橋に
接岸し、手順の最終打ち合わせや照
明3基などの準備に約1時間を要し、
午後11時半ちょうど作業開始の合
図。
 ダイバー2人など総勢14人の作業
グループを最多時で約40人のカメラ
マンや近所の人らが見守る中で、当
初の予定通りのスケジュールで進め
られた。
 呼子丸の前後2ヶ所に太いワイヤ
ーロープが掛けられ、クレーンで徐
々に引揚げられた呼子丸が通常の状
態に戻ったのが午前1時前。機関室
など1部水没を免れた上部を残し、
水没していた部分は黄土色に変色し、
思わず目を逸らしたくなるほどの変
わりよう。甲板部の板も剥げ、原形
をとどめている部分が少ないほどの
"惨状"。
 三高丸から呼子丸に化粧直しした
際や、映画での沈没に関わった大林
組の1人大田貞男さん(建築業)も、
徐々に浮上してくる呼子丸の変わり
はてた姿に「これはひどい、見てお
れない」とシャッターを押すのも忘
れて目をそらすほど。
 船内にたまった水を排水して、呼子丸が船底の穴が開いた2ヶ所から
放水しながら、水面を離れクレーンで高く吊り上げられたのが午前2時
すぎ。約20mの高さで"宇宙遊泳"しながら、右回りに約250度ぐらい旋
回してクレーンの船台に"安置"され、午前2時10分ごろに引揚げ作業は
無事終了した。
 市商工観光課の福原係長がカメラ片手に最後まで引揚げ作業に立ち会
い、本紙ほか3紙が現場で取材した。
 海上沖には警戒船まで出て、作業の安全を期す万全な体制。約3時間
40分におよぶ引揚げ作業を、最多時で40人ほどが見守ったが、最後まで
誰1人として「呼子丸を保存して欲しい、保存するべきだ」といった声
は現場では起きなかった。
 引揚げ後、東尾道の市物揚げ場岸壁に運ばれ、同朝10時半ごろ陸揚げ
された。
 2日、3日に水切りして4日(月)から解体される。
 尾道の大林組関係者による"セレモニー"はいっさいおこなわれないこ
とになった。

転載責任者メモ:大林組=大林宣彦監督の映画制作を支える人たちのこと

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