山陽日日新聞ロゴ 2000年8月30日(水)
人間国宝の宮大工 著書『宮大工千年の知恵』の中で絶賛
 表紙写真に浄土寺本堂
  「私が修理した建物で一番美しい」
浄土寺本堂
 『金』万能、金のみを唯一の価値観として、大量生産、画一化、量
とシェアの拡大、効率、売り上げ至上主義などによって、『ものづく
り』の大切さをいつの間にか見失ってしまったのが今日の日本社会
(直近の雪印、三菱自工などは顕著な例)。そんな折り、尾道市東久
保町、真言宗浄土寺の国宝浄土寺本堂を表紙写真にした「宮大工千年
の知恵」=祥伝社、本体1,600円=がこのほど上梓された。
 著者の松浦昭次氏は平成11年6月、木造建築の大工棟梁としては
故西岡常一氏に次いで2人目の「技術者の人間国宝」に認定されてい
る。
 70歳の現在も、山口県防府市の周防国分寺金堂の改修工事を棟梁
として指揮している現役の宮大工。
 浄土寺の大改修は昭和43年〜48年度にかけて、前述の西岡常一
棟梁の下、松浦氏らの手によっておこなわれている。
 同書の年表では、松浦氏が手掛けた昭和25年6月〜平成10年
10月までの修理工事(32件)のうち、5件の国宝の修理工事の1つ
として『昭和45年11月、浄土寺本堂修理工事(国宝)=鎌倉。浄
土寺山門修理工事(重要文化財、当時)=鎌倉』と明記されている。
 著書は「まえがき」で『もしも五重塔や本堂の「軒の線」が真っ直
ぐな直線だったとしたら、はたしてそれらの建物に美しさをお感じに
なるでしょうか。
 伝統的な日本の社寺建築の美しさの根源は、端に近づくにしたがっ
て緩やかに反っていく、華麗な「軒反り」にあります。そして昔の大
工の知恵と技術が一番詰まっているのも「軒反り」なんです。
 コンクリートや鉄骨であれば、自由自在でしょうが、木を組んで美
しい曲線、「軒の反り」を出すにはとても高度な技術が必要になりま
す...。』と述べている。
 そして文中、この高度な「軒反り(のきぞり)」の代表的建築とし
てわが浄土寺が採り上げられ、いかにその建築が優れているかという
著者の意図が表紙写真にまで採用されたことで如実に表れているとい
うことができる。
 松浦氏は自分の生いたち、宮大工との出会いに触れたあと『日本的
「美」に、いかに「軒反り」が重要か』の見出し(15P) の項で、国宝
の東大寺南大門(奈良)、国宝浄土寺浄土堂(兵庫)、国宝円覚寺舎
利殿(神奈川)、国宝浄土寺本堂(広島)の4枚の写真を掲載。
 『私が修理させてもらった建物の中で一番美しいと思っている建物
も瀬戸内にあります。それは広島県尾道市の浄土寺本堂です』と著作
の本題に入った箇所で、かくまで明快に言い切っている。
 そして『とくに軒線に注目して見てください。薄化粧の日本美人の
ようなたたずまいです。大仰(おおぎょう)なところはどこにもなく
て、美しさと力強さが絶妙に調和している。建築技法にも高いものが
ある』と"推薦"の理由を述べている。
 続いて「薄化粧の日本美人
」の見出しの項でも、当然のことながら
浄土寺が"主役"として登場する。
 そして、浄土寺本堂を建てた大工が東大寺専属の大工でありながら、
『あの武骨な東大寺を建てた大工が、なぜ尾道では薄化粧の日本美人
のような浄土寺本堂を建てたのか』、氏の考え方をおもしろく語って
いる。
              〜後略〜

転載責任者メモ:テレビでも見たことのある松浦氏ですが、こんなに浄土寺について
        思い入れをお持ちとは全く存じ上げませんでした。寺社建築を観る
        とき、より深く観賞するため大いに役立ちそうな本ですね。

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