山陽日日新聞ロゴ 1995年1月1日(日)
大林宣彦監督・赤川次郎原作『あした』2月クランク・イン
  製作発表も地元尾道から全国へ発信
向島シーパークの浜
 昨年の「放浪記」森光子さん来尾に、勝るとも劣らない、サンニ
チ愛読者への"お年玉"。『廃市尾道』の復活、再生が賭かる1995年
の新春、映画の町尾道は地元出身の大林宣彦監督が「ふたり」以来、
地元での5年ぶりのメガホンを新尾道三部作の第2弾『あした』で
取る。観光都市尾道をここ十数年、絵になる町尾道。映画の町尾道
として支えてきた最大の功労者が大林宣彦監督。監督が今回の『あ
した』に賭ける意欲は並々ならぬものがあり、2月のクランク・イ
ンに続く製作発表も当尾道から全国へ発信される予定。
 赤川次郎原作の「午前0時の忘れもの」は、まさに大林映画のた
めに書き下ろされた作品。原作ではバスが湖に転落し沈没するシナ
リオだが、『あした』ではバスが古い木造船になり、バス停留所で
の"人間愛"に満ちた深夜の6時間のドラマが、『あした』では船着
き場で展開される。この主舞台の船着き場がどこに設定されるのか?
昨年8月から11月にかけて、実に4か月以上も費やして、監督自
らも何度も参加してロケハンが繰り返された。大林映画の舞台は即・
観光の目玉になる、という地元の期待も熱く、尾道周辺の海岸線、
港という港はくまなく調査。しかし、監督のイメージする"港"が見
つからず、尾道周辺での撮影が絶望視される危機も到来したが、尾
道大林組や地元の熱意が実り、11月になってやっと監督お気に入
りの適地が、写真掲載の向島町立花旧タイケンシーパークと決定を
みた。
 ロケはシーパークに船着き場や待合室、それに廃船寸前の木造船
などがセットされ、撮影開始は2月中旬と決まった。クランク・イ
ン後に、1月16日のオーディションで決まる16才のヒロインや、
映画の性格を左右してしまう準主役のヤクザの親分などキャスティ
ングの製作発表も当尾道で行われる予定。
 クランク・アップの4月半ば頃まで、映画の町尾道の話題は『あ
した』が独占することになる。
 「僕が撮る映画は、例え撮した場所が尾道以外でも、映画を観た
人すべてにとって、そこは尾道になってしまう」と大林監督自らが
語るように、尾道のまちそのものが大林映画のルーツ。
 『廃市尾道』というショッキングな命名は「ふたり」を撮影した
長野重一氏の"創語"。その言葉の中には、廃れゆく尾道を切って捨
てるのではなく、限りなく愛しく想う長野氏の尾道への愛情が満ち
溢れている。
 古い文化遺産と歴史に恵まれ、自然景観に富んだ尾道。その尾道
の良さをどのようにして守り育て、そして新たなる創造をしていく
のか。その賢明なる創造を求めてやまない大林宣彦監督の願いに、
市民はただ恩恵を享受するにとどまらず、賢い市民としての意識の
目覚め、知恵のある行動でもって応える時が、まさに今ではなかろ
うか。

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