山陽日日新聞ロゴ 1998年9月1日(火)
映画『あの、夏の日』  「文明社会が異常な天候を」
 幸運呼んだ『情熱と技』 40日間の尾道ロケ全て終える
大林監督と坂本典隆カメラマン 空を見上げる監督 原田ではボンネットバスも登場
 尾道市制施行百周年を記念してピー・エス・シー(大林恭子社長)と
プライド・ワン(芥川保志社長)が制作している大林宣彦監督の映画
『あの、夏の日』の尾道ロケが29日夕方で全て終了。30日までにス
タッフと出演者が尾道を離れた。大林監督が「いつも空を見上げながら
だったので、今までのロケの中では一番短く感じた」と話すように、ス
ケジュールの立てにくい中での40日間の撮影が続いたが、ある意味で
『天を味方に』して予定通りのクランクアップとなった。今後は編集作
業に移り、来年初夏の完成と公開に向けまだまだ長い道程となる。今回
の尾道ロケがもたらした当地への経済効果は計り知れないが、何よりボ
ランティアとして関わった市民には大きな思い出が残り、尾道が日本全
国・世界へ向けてメッセージを発信できる町であることを確信、21世紀
に語り継がれる作品になることが期待されている。
 最後の撮影が行われたのは正徳町、果実共同撰果場のみかん倉庫内に
組まれていたロケセット。主演の小林桂樹さんと厚木拓郎君が全ての演
技を終えると、スタッフから暖かい拍手がわき、大林監督と握手をかわ
し40日間の長期ロケの労をねぎらった。
 同日夜にはグリーンヒルホテルで関係者による打ち上げパーティが開
かれ、大林恭子プロデューサーは「感動の毎日でした」。大林監督は
「すっかり秋になりましたが、今年の夏は尾道では初めてというぐらい
の悪天候でした。どうも人間のやってきた文明社会がこういう異常な天
候をおこさせてしまったんではと思います。そういう中で、人間の本当
の幸福さとは、豊かさとは何であるかということをテーマにした映画を、
ひと夏考えながらつくってきたことは大変象徴的なことだったと思いま
す。悪天候ながらも撮影では全てピーカンの絵を撮ることができ、つい
ていました。スタッフとキャストの皆さんの映画への情熱とプロフェッ
ショナルの技があったからこそ、幸運だった現場、と言えるんではない
でしょうか。良く対応して頂いてとてもクオリティの高い絵をたくさん
撮ることが出来ました。素晴らしい作品になるだろうと確信しています。
良かったなぁ皆さん、ありがとう」と話した。
 大林監督は息つく間もなく30日には三重県での講演会に出演し、そ
の足で帰京、約3ヶ月かけて仕上げの作業にかかる。
「私の代表作が出来た」
 小林桂樹さん
  ボランティアに感謝
撮影を終えて握手する小林桂樹さんと厚木拓郎君
 撮影が始まる前に、「20世紀の代表的なおじいさんを思い切って演じ
たい」と話していた小林桂樹さんは、「年のせいでしょうか、2日酔い
でも何でもないのに、好調な日と不調な日があって、なかなか思うよう
に出来なかったんですが、スタッフの情熱に支えられて何とか演じ切り
ました。尾道のボランティアの皆さんの暖かい心遣いに助けられ仕事が
出来ました。皆さんのことは決して忘れません。私にもこれで、数少な
い代表作が出来たと思います。これからも頑張ります」と笑顔で話して
いた。


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